不動産に関するQ&A

【登記識別情報を盗まれた時の対処】
Q. 登記識別情報を盗まれてしまいました。どのように対処すればよいでしょうか。

A. 登記識別情報の失効の申出ができます。盗まれた登記識別情報が不正な登記申請に用いられることがないように、登記名義人又はその相続人その他の一般承継人に、登記官に対して登記識別情報についての失効の申出をすることが認められています。
 登記識別情報とは、登記の申請がなされた場合に、登記により登記名義人となる申請人に、その登記に係る物件及び登記の内容とともに、登記所から通知される情報です(新不登法21条本文)。登記識別情報は、アラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号であって、不動産及び登記名義人となった申請人ごとに定められます。

 登記識別情報は、本人確認手段の一つであり、後日の登記手続において、登記名義人本人による申請であることを登記官が確認するため、登記所に提供してもらうことになりますが、秘密保持の強い要請があります。そのため、登記所から通知をする際には、書面申請の場合は、通知書の登記識別情報を記載した部分を覆う目隠しシールを貼り付け、本人以外の者がシールをめくって登記識別情報を盗み見た場合には、その痕跡が明らかになるような工夫をして、登記所の窓口において、本人を確認した上で交付する方法で通知され、また、オンライン申請の場合は、申請人が申請時にあらかじめ送信した専用の公開鍵を用いて登記識別情報を暗号化し、これを申請人がダウンロードする方法により通知されています。
 
  このように登記識別情報の通知について細心の注意が払われているとはいえ、本人に通知された後、登記識別情報が盗まれるおそれは否定できません。そこで、登記識別情報が盗まれてしまった場合に備え、規則により、登記名義人又はその相続人その他の一般承継人に、登記官に対して、登記識別情報についての失効の申出が、認められています(不動産登記規則65条1項)。失効の申出をすれば、登記識別情報の効力が失われますので、盗まれた登記識別情報が不正に用いられることを防止できます。

 不動産に関する権利を取得し、登記識別情報の通知を受けたときには、次に権利を譲渡するに際して、本人確認手段として、登記所に対して、登記識別情報を提供することが必要になります。しかし、登記識別情報をなくしてしまったり、失念したりした時は、登記識別情報の提供ができません。失効の申出をして登記識別情報の効力が失われた時も同様です。登記識別情報の再通知は、原則的には、認められていません。
 登記識別情報は、一般的な本人確認手段としての印鑑及び印鑑証明書又は電子署名及び電子証明書に加え、登記手続固有の本人確認手段となるものですから、登記識別情報の提供ができないときは、別の手段による本人確認手続が必要となります。

 この点、別の手段による本人確認として具体的には、登記官が事前通知の手続により本人確認を行うのが原則となります。住所移転を利用した、なりすましによる登記申請に対処するため、所有権に関する登記の申請がされた場合において、登記申請前に登記義務者の登記簿上の住所が変更されているときは、変更前の住所にも原則として登記申請があったことを通知することになります。
 また、本人確認については、登記識別情報を登記所に提供することができない場合に、資格者代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士)が適切な本人確認情報を提供し、登記官が提供された情報の内容を適正なものと認めたときは、事前通知の手続を省略することができるという資格者代理人による本人確認情報の提供の制度も認められています。