ニュースや新聞で、空き家問題が頻繁に取り上げられていますが、相続などをきっかけに今後も多くの空き家が発生することが予想されます。
空き家を放置すると劣化が進み資産価値も下がることになりますので、売却する事や人に貸すことも選択肢に入れる事が必要です。
1.家を貸すときの収支
家を貸す前に、収入と支出についてシミュレーションをしておくことが大切です。
注意しなければならないのは、家を貸す際にも一定の支出が発生することです。
家賃収入があっても支出が発生した結果、手元に残るのはごく少額になってしまう可能性もあるからです。
◆1-1.収入は家賃収入がメイン
家を貸す場合の収入は、家賃収入がメインとなります。
家賃を含めた収入の種類と、それぞれの相場は以下のとおりです。
・礼金:入居者から貸主に支払われる謝礼金 ⇒ 0円~家賃の2ヶ月分
・敷金:退居時の原状回復などに使うための預り金 ⇒ 0円~家賃2ヶ月分
・家賃:入居者が毎月払う賃料 ⇒ 物件により異なる
・更新料:賃貸契約を更新するときに、貸主が入居者に請求できる料金 ⇒ 0円~家賃1ヶ月分
家賃は立地、築年数、間取りにより異なりますので、所有物件と条件が近い物件を探してみると相場がわかります。
また、共同住宅の場合は、家賃とあわせて共益費を入居者が支払うケースが多いです。
そのほか、敷地内にある駐車場を貸した場合などは別途その収入を見込むことができます。
◆1-2.費用・税金などの支出
家を貸すにも費用がかかります。家を貸すことによってかかる費用は以下のとおりです。
・仲介手数料:賃貸契約が成立した際に不動産会社へ支払う報酬 ⇒ 家賃の1ヶ月分~家賃の2ヶ月分(広告費を含む)
・管理委託料:管理を委任する場合の費用 ⇒ 家賃の5~10%
・リフォーム費:退去後、次の入居者が入るまでにかかる費用 ⇒ 実費
・修繕費、メンテナンス費:物件の修繕やメンテナンスを行う費用。修繕費は毎月一定額を積み立てる方が計画的に修繕ができます。
・火災、地震保険料:契約内容により異なる
ローンが終わっていない場合にはその支払いも別途必要となります。
また、売却して手放すわけではないため固定資産税など各種税金の支払いが必要となるほか、家を貸すことにより収益が発生すれば、所得税・住民税の納付も必要となります。
家を貸すときの税金は以下のとおりです。
【税金の種類・内容・税率】
・固定資産税:不動産を保有しているオーナーに対して課税される税金 ⇒ 税率は固定資産価格の1.4%
・都市計画税:都市部ではない方には、都市計画税はかかりません ⇒ 税率は固定資産価格の0.3%
・所得税、住民税:家を貸して発生した所得に対してかかる税金 ⇒ 所得額により異なる
今ある自宅を貸す場合でも、家賃とのバランスによっては収益が低くなってしまうこともあります。そのため、事前にある程度の収支計画を立てておくことが大切です。
2.家を貸すまでの流れ
「家を貸す」と決めた場合の一般的な流れについて説明します。
家を貸すまでの流れは物件を管理する方法によって異なりますが、一般的な管理委託方式で家を貸すまでの流れを紹介します。
この方法なら遠隔地に住んでいても管理が可能となります。
◆2-1.管理会社を決める
まず、家を貸すには管理会社を探します。この際に知っておきたいのが、不動産会社ならどこでもいいわけではないということです。
管理業務の対応範囲や管理委託費は各社で異なり、また、入居者の募集方法や集客力も管理会社によって違いがあるからです。
管理会社を選ぶ際に確認しておきたいポイントは以下のとおりです。
・管理サービスの内容はどこまでか(入居者の募集、契約、家賃回収、クレーム対応、更新や退去時の手続き)
・管理委託費に含まれる管理業務の範囲と別料金となる業務について
・どのような方法で入居者募集をしてくれるのか(自社サイトや不動産ポータルサイトへの掲載先など)
・管理業務の報告をどれくらいの頻度で受けられるか
家を貸すときに管理会社を選ぶには、管理委託費の違いだけでなく、サービス内容をしっかり見極める事が大切です。
できるだけ高い家賃で早期に借主を見つけることや、高品質な管理サービスで入居者に定着してもらう事が重要です。
自分に合った管理会社が見つかったら「管理業務委託契約」を結びます。
契約までに、間取り図や設備関係資料を整理しておくとスムーズです。
◆2-2.募集条件を決める
次に、「賃料」「賃料以外の条件」について、管理会社と相談して決めていきます。
【賃料の検討】
管理会社が周辺の相場を考慮して適正家賃を算出してくれます。
賃料は周辺相場のほかにも、家を探す需要の多いシーズンかどうかも影響します。
家賃設定が高すぎれば、借主がなかなか見つかりません。
逆に、低すぎる家賃で貸してしまうのも長期的にみると損ですし、あとから値上げするのは非常に困難です。
住宅ローン返済額なども考慮しながら、管理会社と相談していくらで貸すかを決めます。
【賃料以外の条件の検討】
また、家賃以外の入居条件についても決める必要があります。
自分の所有物件を貸し出すため条件をたくさん付けたくなりますが、色んな条件を付けるという事は入り口を狭くして入居者を制限することになるため、条件が多ければ入居者が見つけにくくなります。
具体的には、次のような条件について検討します。
・契約期間
・ペット飼育の可否
・退去時の原状回復費用の額や範囲
・敷金、礼金の有無
・保証人や保証会社を利用するか
条件はオーナーが自由に決めることが出来ますが、法的リスクの回避やスムーズな入居付けに繋げるためにも不動産会社のアドバイスを参考にしながら決める方が良いです。
◆2-3.貸出の準備をする
募集条件を決めるのと並行して、リフォームの検討や貸出の準備を行います。
貸す前にリフォームをどこまで実施するかは重要な問題です。
きれいにリフォームしたほうが入居者が決まりやすいのは事実ですが、費用をかけすぎても収支が合わなくなります。
家賃の設定や、貸し出す期間も考慮する必要があるので、管理会社に相談しながら決めることになります。
なお、故障している設備の修繕は必須です。
契約書類に設備として記載する箇所は、通常使用ができる状態にして貸す必要があります。
また、室内クリーリングを自分でされるオーナー様がいますが、プロのハウスクリーニング業者がするのとは仕上がりに大きな差が出る事が多く、
結果的に空室期間が長くなる要因になりますので専門業者へ任せる方が良いです。
◆2-4.入居者を募集し、賃貸借契約を結ぶ
入居者募集と賃貸借契約準備が整えば、管理会社を通して入居者を募集します。
物件の魅力や特徴(立地、築年数、間取り、設備など)が希望者に分かりやすいように、あらかじめ管理会社と打ち合わせしておきます。
入居希望者が見つかれば室内を見てもらいます。案内は、仲介会社や管理会社がしてくれますのでオーナー様が立ち会う必要はありません。
すでに空室になっている場合は、内見に対応できるように管理会社に鍵を預けておきます。
管理会社は仲介会社が案内しやすいよう現地にキーボックスを設置しておくことが多いです。
入居申込が入れば、入居審査をします。
基本的にはオーナーが最終決定しますが、入居者の選定の判断まで管理会社に任せることもできます。
最近は入居者負担で保証会社に加入してもらう事が多く、保証会社の審査も同時に行います。
入居者の勤務先などの属性や保証人を確認し、承認すると決めれば賃貸借契約を結びます。
管理会社が契約書を作成してくれるので、署名押印して契約を取り交わします。
3.家を貸すときの注意点
◆3-1.自分に合った管理方法を選ぶ
管理方法には、以下の3種類があります。
・自主管理
・管理委託
・サブリース
3つの方法のうち、一般的には、手間も費用もあまりかからずプロに管理を任せられる「管理委託」を選択されるオーナー様が多いです。
管理委託を得意とする不動産会社は多くありますので、管理業務をどこまで対応してもらえるのか比較検討して契約することが重要です。
どうしても空室が心配なら、サブリースも選択肢の一つです。収益性よりも安定性を優先したいという人には向いています。
3つの違いについて、以下で詳しくご説明します。
【自主管理】
家賃回収、クレーム対応など、入居者とのやり取りはオーナーが自ら対応します。
そのため管理費用が不要でコストが抑えられます。なお、入居者募集から賃貸借契約の締結までは、不動産会社に依頼します。
自主管理のデメリットは、クレームやトラブル等に常に対応できるようにしておく必要があり時間や手間がかかることです。
また、目の届く範囲の物件でなければ対応ができないため、遠方にある家を貸す場合には向いていません。
【管理委託】
入居者募集、契約、家賃回収などの業務全般を管理会社に委託する方法で多く利用されている管理方法です。
手間がかからず、不動産管理の専門家に任せることができるので安心です。
家賃の5~10%前後を管理委託費として支払うのが一般的です。
選ぶ管理会社によってサービス内容に差があるので、しっかりと比較して選定することが重要です。
【サブリース】
不動産会社がオーナーから家を借りた上で居住者に転貸します。
3つの管理方法の中で最も手間がかかりませんし、借主が退去しても不動産会社から一定の家賃が得られるため空室リスクの心配がありません。
ただし、不動産会社の利益が差し引かれるため、サブリースの賃料は相場よりも安くなってしまうというデメリットがあります。
◆3-2.住宅ローンの種類や控除を確認する
住宅ローンが残っているけれど家を貸したいという場合は注意が必要です。
住宅ローンは、自宅を買う人のためのローンであるため、自ら住むことが条件となっています。
家を貸す場合には、事業用ローンに切り替えるのが原則ですが、住宅ローンよりも金利が上がってしまうのが一般的です。
ただし、転勤の間だけ貸すといった事情があれば住宅ローンのままで賃貸することを認めてくれる場合もありますので、金融機関に相談してみてください。
なお、税金が還付される「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」は、自分と家族が居住しなくなると適用を受けられません。そのため、銀行が住宅ローンのままでの賃貸を認めてくれたとしても、住宅ローン控除は対象外となる場合がありますので税務署に相談してください。
◆3-3.入居者の選定は慎重に行う
家を貸すには、入居者の選定を慎重に行うことがポイントです。
入居審査を的確に行わなかった場合、入居者トラブルが発生してしまうリスクがあるからです。
入居者トラブルには、以下のようなものがあります。
・家賃の滞納、支払いの遅延
・ごみ置き場の使い方など近隣のルールを守らない
・ペットの飼育や喫煙などに関するルールを守らない
・騒音や悪臭を発生させる
・不法駐車をする
家賃の支払いがなければその期間の督促の手間がかかりますし、最終的に回収できない可能性もあります。
また、部屋を使用する際のルールを守らないことによって、部屋の傷みがひどくなり物件としての価値が落ちてしまうことも考えられます。
家を貸すのが初めての場合、こうした入居者の審査を行うことは簡単ではありません。
信頼できる管理会社を選ぶことで、経験値にもとづいた的確な審査をしてもらうことが期待できます。
◆3-4.ケース別の注意点を把握する
家を貸す際には、一戸建てなのかマンションやアパートなどの集合住宅なのかによって注意点は変わってきます。
ここでは、それぞれの注意点について紹介します。
【一戸建ての場合】
一戸建ての場合、分譲マンションのように修繕積立金を支払う必要はありませんが、築年数が経てば外壁の塗り替えや屋根の修繕も必要になってきます。
物件の価値を落とさないためには適切なメンテナンスや修繕は必須となるため家を貸す期間中も修繕費は一定額を積み立て、必要に応じてメンテナンスを行っていく必要があります。
同様に、一戸建ての場合は災害リスクにも自身で対処する必要があります。たとえば地震や台風で家が一部倒壊または全壊した場合には、修繕費用を負担する必要が出てきます。こうしたリスクを軽減するためには、各種保険に適切に加入しておく必要があります。
【マンション・アパートの場合】
マンションを貸す場合に特有の注意点として共益費をどうするかという点があります。マンションやアパートの管理委託費を管理会社に実際に支払うのはその物件のオーナーです。管理委託費とは別にかかる日常清掃費用やエレベーター管理費もありますので、共益費は家賃とは別に管理し、収支がマイナスにならないように共益費や管理プランを設定する必要があります。
また、分譲マンションの場合は区分所有者である以上、管理組合に入ることも必要となってきます。こちらも同様に借主が入るわけではない点を押さえておく必要があります。
4.家を貸すもしくは売却の判断はどうするか
家を貸すことを検討する場合、まずは貸したい家の賃貸需要を把握し、また自分が今後住む予定があるかどうかによってケース別の手順をとることが大切です。
◆【賃貸需要が多く、再び自分や親族が住む可能性があるケース】
せっかく賃貸需要が多いのですから、空き家にしておくのはもったいないです。
この場合には、再び住むまで定期借家契約で貸し出すのが最善の選択といえます。
定期借家契約について誤った認識を持つ不動産会社もありますので、経験値が高く正確な知識を持つ管理会社を選ぶことが大切です。
◆【賃貸需要が少ないが、再び自分や親族が住む可能性があるケース】
管理会社に相談してみたら、残念ながら賃貸需要が少なく貸し出しても思ったほどの賃料が見込めないという場合もあります。
メンテナンス費用や入居者トラブルの可能性などを考えるとデメリットのほうが大きいと感じるかもしれません。
このような場合には、空室管理という選択肢があります。空室管理とは、管理会社が換気、掃除、ポスト清掃などを代行してくれることをいいます。
当社では空室管理も行っておりますので何なりとご相談ください。
◆【賃貸需要が多く、再び自分が住む予定がないケース】
このケースが最も悩ましいと思われます。
再び住まないのであれば、売るという選択肢もありますが、貸すか売るか迷って即断できない時は焦らずに長期的に考え、売らなければならない状況になるまでは貸し出すというのも選択肢の一つです。
まずは不動産会社に家を貸すことについて相談し、貸した場合の収支を確認してください。
ただ、管理会社から収支計画を受け取った結果、思ったほどの賃料が見込めない場合には売却を検討するのがいいと思われます。
貸した場合の収支と、売却金額を比較検討して判断することが大切です。
◆【賃貸需要が少なく、再び自分が住む予定がないケース】
家を貸しても高い賃料が見込めず、またずっと空き家にならずに毎月家賃収入を得られるとは限らない場合は売却する方が得策です。
このケースの場合は、貸すよりも売るほうがリスクは小さくなります。
家を貸すことに迷いがある場合は、メリット・デメリットや収支を把握し、現在気になっている事をクリアにしてから貸すことを決断するのがお勧めです。
その際、貸したい家の賃貸需要を把握し、また自分が今後住む予定があるかどうかによってケース別の手順をとることが必要になります。
場合によっては、売却を検討することも一つの方法です。
家を貸すために最善の選択肢を見つけてください。
当社では空き家対策の相談を無料で承っております。
所有されている空き家の賃貸需要や売却価格を知りたい等がございましたら当社までお気軽にご相談ください。