不動産に関するQ&A

【迷惑行為を繰り返す賃借人に対する対処】
Q. 賃借人に賃料不払い等の債務不履行がない場合でも、賃借人が大きすぎる生活騒音を出したり迷惑行為をする場合、賃貸人はそのような理由で賃貸借契約を解除できるのでしょうか。

A. 賃借人が生活騒音により近隣迷惑行為をしている場合について考えてみます。そもそも、賃借人には、賃貸借契約の定めやアパートという建物の用法に従って賃借建物を使用収益しなければならない義務があります。そこで、賃貸借契約の中に、「賃借人は近隣迷惑行為をしてはならない」旨の特約がある場合だけでなく、このような特約がない場合でも、近隣迷惑行為をしないようにするという義務は用法遵守義務に含まれ、賃借人は信義則上、このような義務を賃貸人に負うと考えることができます。

 もっとも、他方において、人が社会の中で他の人々と生活していく以上、他人による騒音にさらされることは避けられません。ことにアパートのような建物では各戸間の音を互いに完全に遮断するということは実際上不可能です。したがって、賃借人の出す生活騒音が近隣住民にとって社会生活上受任すべき限度を超えないのであれば、賃貸人は近隣迷惑行為を原因として賃貸借契約の解除をすることはできません。

 賃借人の出す生活騒音が社会生活上受忍すべき限度を超え、賃貸人との信頼関係を破壊するに至った場合はどうでしょうか。
 この場合、上記のとおり、賃借人は用法遵守義務違反が認められるので、賃貸人は、賃借人との信頼関係破壊を理由に賃貸借契約を解除できます。むしろ、賃貸人が、賃貸借契約を解除しないで放置すると、隣室に居住する賃借人から、賃貸人として建物を使用収益させる義務を怠ったとして損害賠償請求を受けることにもなりかねませんので、賃貸人は放置せず適切に対処するべきだと思われます。