不動産に関するQ&A
Q. 一団の建売住宅7棟のうち1棟を3,480万円で購入しましたが、購入のわずか2か月後、同じタイプの別の棟について2,980万円で売買契約が成立したという話を聞きました。建売業者に損害賠償を請求できるでしょうか。
A. 建売業者がほかの棟を値下げして販売したとしても、原則として、建売業者に損害賠償を請求することはできません。
ご質問のケースに類似する事案において、買主Xが、売主Yに、販売未了物件の販売価格に関し、信義則上の価格維持義務違反があるとして損害賠償請求をした裁判例がありますが裁判所は次のとおり判断し、請求を否定しました。
『建売住宅の販売行為は、売主がその財産を処分する行為であり、その販売価格の設定は、本来、売主が自由に行い得るものである。本件物件群のように市場性のある建売住宅について、売主が、その売行き、市況の変化、売れ残りが生じて事業資金の返済が遅れることにより発生する金利負担その他の採算等を考慮して、販売価格を当初のそれより値下げして販売することも、売主が経済的な必要性に基づいて行う合理的な財産の処分行為であり、原則として、売主が自由に行うことのできるものというべきである。不動産業者が同種同等の建売住宅を一斉に販売する場合であっても、そのことから直ちに、売主に、これを同等の価格で販売し続けなければならない義務が買主との関係で生じると解することはできない。
Xは、本件物件群のような建売住宅の購入者が、売買の目的物と同種同等の物件につき今後も購入価格と同一の価格が維持されて販売されるとの期待を抱き、売主たる不動産業者が、購入者の上記期待を認識し又は容易に認識し得た場合には、当該不動産業者は、同種同等の物件の販売を行うに当たり、可能な限り上記購入価格と同一の価格を維持すべき信義則上の義務を購入者に対して負うと主張するが、売買の目的物が本件物件群のような同種同等の建売住宅であることや、売主が不動産業者であるという理由だけで、売主が買主に対し上記のような信義則上の価格維持義務を負うと解することはできない。』
判決はこれに続けて、例外的に売主に損害賠償責任が生ずる場合があることにも言及しています。
『もっとも、本件物件群のような同種同等の建売住宅の一斉販売において、①引下げ後の価格が市況の相場に照らし、著しく低廉なものであり、これによって先に販売された同種同等の建売住宅の資産価値が市況の相場よりも大きく引き下げられたと認められる場合や、②売買の目的物と同種同等の物件が今後も売買代金額と同等の価格で販売され続けるであろうとの期待を買主が抱いても無理はないといえるような言動が、売買交渉の過程で売主側に存在したと認められる場合等のように、特段の事情が認められる場合には、売主の販売価格引下げ行為が信義則に違反する行為として買主に対する不法行為を構成すると解する余地がある。』(ただし、本件は例外には該当しないとの判断です)